映像作品は時間作品の一つです。人間の感覚、知覚は視覚優位と一般にいわれますが、 映像作品というと、通常は映像が主で音あるいは音楽が従となります。しかし、 これがどのような形態かを理解するために、あえて音や音楽を主とした映像作品について取り上げ、 通常の映像作品の特徴について考えてみましょう。
音、あるいは音楽主導の作品は音情報が主となります。したがって映像は相対的にはおとなしめ になります。しかし、もう一つ重要な点は、抽象性です。通常の映像作品はシナリオがあったり、動作 が理解できたり、具象により時間を引っ張っていきます。抽象的なものもありますが、これはいわゆる ファインアートとしての扱いになり、われわれの身の回りではあまり登場しません。これに対し、音楽を 主とした映像作品は、まさにファインアートに近くなります。つまり、映像という視点からは抽象度が 高く、具体的なストーリー性も一般的には希薄です。ポップスの、あるいはそのシンガーのプロモー ションビデオ、あるいはカラオケの映像は、映像の抽象性を避けるため、あくまでも歌詞に沿った 具体的なストーリーの実写を添えるか、全体についてはストーリー性はなくとも短時間のストーリー をはさむなどの方法を取ります。また、歌詞のない器楽曲の場合は、「名曲アルバム」などの番組 で見られるように、音楽作品から想起される風景映像などを挿入することにより具象性を保ちます。
これに対し、電子メディア作品などはこれらが複雑にからみあったメタなレベルでの作品となります。 ハイパーテキストと、静止画像、動画に音楽、音声をふんだんに取り入れた作品は時間作品の要素、 あるいは空間作品の要素が組み合わさっています。
また、時間作品を表現するための補助的なメディアについて考えてみます。絵コンテ、楽譜、シナリオ、 詩、振り付け譜などは、みな空間に展開されています。すなわち、時間作品もそれを最終的に表現する ための前段階、あるいは記録、伝達、保存のためなど、上演目的以外では空間的に展開された表現 式に落とされることが多く、時間要素も結局は空間で表現できる部分が多く、2つは大きな関連があります。
しかし、時間作品には、これらに共通な特徴もあり、これを再度認識しておくことが重要です。
映像と音は統合という以上、何らかの関連を持たねばならない。実写の場合は映像と音の関係は自明であるが、 映像先にありきで音(音楽)を後につける場合、音、音楽先にありきで映像を後につける場合で、この関係性は 以下のような視点が重要である。
各種メディアを統合することで全体の工程が複雑になっている。そのため、個々のメディアにはさまざまな 編集ツールがあったとしても、これらを総合的に扱う技術、規格が標準化されてきた。また、編集ツールも 淘汰されつつある。実写したもの、音楽が録音されたものなど、素材を編集加工してまとめあげ、最終的に 映像作品にまとめあげるなどのコンテンツ作成の最終段階での工程を一般にオーサリングと呼ぶ。この 映像オーサリングには、ドルビー方式など音のエンコーディング方式なども決められており、これらに準拠 する映像編集ツールは比較的少ない。