人間の耳で聴きとれる周波数は20Hz〜20kHzと言われています。サンプリング定理(量子化定理)によると、元の波形を正しく再生するには、量子化したい元の波形の周波数の最低2倍のサンプリング周波数が必要となります。このため、デジタル音声では、44.1kHz(CD)と48kHz(DAT)のサンプリング周波数が主に利用されています。
音楽用のCDに必要なデータ量を計算してみましょう。
音楽用CDは、左右2チャンネルで、サンプリング周波数44.1kHz、16ビットで量子化されています。
1秒間の音声データを録音するために必要なデータ量は、
2 x 44.1x103 x 16 = 1411200
(ビット)
となります。
CD1枚には最大74分記録可能です。 CDに記録可能なデータ量はいくらになりますか?
次は、音色について考えてみましょう。波形の最も基本的なものは正弦波です。
フーリエ級数展開は勉強しましたか。フーリエによれば、基本波に適当な周波数の高調波を選択し、その振幅を調整し加えてやることで、 理論的には全ての波形を作ることができます。どんな周期関数であっても、三角関数の足し算のみで表現できます。
まず、基本になる音の高さ(ピッチ) を決めます。例えば、周波数f=440Hz (ラの音) とします。 この基準になる音を基本波と言います。これに、正弦波を足し合わせていきます。すると、周波数f=440Hzの音の高さで、さまざまな音色を作ることができます。
基本波(基音: Fundamental) に足し合わせる 正弦波のことを、第n調波(倍音: Overtone) と言います。 基本波の周波数をf=440Hzとすると、
基本波 | 第2調波 | 第3調波 | 第4調波 | 第5調波 | ・・・ | 第N調波 | ・・・ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
周波数 | 440Hz | 880Hz | 1320Hz | 1760Hz | 2200Hz | ・・・ | 440 x N Hz | ・・・ |
となります。 それぞれの調波の振幅は基本波の振幅より小さくします。
これは ノコギリ波と呼ばれる波形のスペクトルで、すべての整数調波を含みます (ノコギリ波には、up と down の二種類があります)。
基本波 | 第2調波 | 第3調波 | 第4調波 | 第5調波 | ・・・ | 第N調波 | ・・・ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
周波数 | 440Hz | 880Hz | 1320Hz | 1760Hz | 2200Hz | ・・・ | 440 x N Hz | ・・・ |
大きさ | 1 | 1/2 | 1/3 | 1/4 | 1/5 | ・・・ | 1/N | ・・・ |
以下に、基本波、第2〜5調波までの関係を示します。このように高調波を足していくとノコギリ波(down)に近付いていきます。
もう一つシンセサイザーの音作りに欠かせない波形として、矩形波があります。 これは、長方形の形をした波形で、 整数調波のうち、 奇数次調波のみを足し合わせていきます。
基本波 | 第3調波 | 第5調波 | ・・・ | 第(2N-1)調波 | ・・・ | |
---|---|---|---|---|---|---|
周波数 | 440Hz | 1320Hz | 2200Hz | ・・・ | 440 x (2N-1) Hz | ・・・ |
大きさ | 1 | 1/3 | 1/5 | ・・・ | 1/(2N-1) | ・・・ |
しかし、このような加算方式で波形を合成することは現実的ではありません (無限調波まで演算できない)。このため、ほとんどのシンセサイザでは 減算合成方式を使用します。ノコギリ波や、矩形波を生成し、その後、いらない倍音成分をフィルタを通して削り落し、音色を合成します。
参考のために、歪み波の波形アプレットはこちらです。
たとえば、同じ遮断周波数の二種類のLPFを示します。一つは、遮断周波数から1オクターブ高い周波数が-12dBに減衰するLPFで、もう一つは、-24dBに減衰するように設計したLPFの例です。