Naotoshi Osaka Computer Music Pieces
Introduction
These are the explanations of five computer music pieces composed since 1991.
コンピュータ・ミュージックの音素材として、いわゆる「歌声」も含めた音声全般に限りない
魅力と可能性を感じている。この曲は言語を獲得する前の1歳児の声を題材にした
もので、初鰹、春の竹の子などのように、声の旬と思っている。喃語とは1歳未満
の赤ちゃんが発声する「ばー」「ぶー」などの非言語音声をいうが、ここでは作者が
この語を強引に拡大解釈しており、日本語の音韻と聞くことができるが、無意味な
音声を扱っている。
曲は、この幼児に語りのように歌わせながら、ヴァイオリンとソプラノ
が対話をしたり、あるいは、これを包み込む形をとって進行させている。
ここでの課題は、「幼児」が
どのように語り
口を変えていくのか、という点である。なお、幼児の声は、50分相当の録音テープ
から500個程度の音声を切り出して作成した。この曲を創るにあたり、最も困難な過程
は声の収録でした。
Technical Note
作者の開発しているNeXTコンピュータ上の音生成・編集、および演奏システム
``Otkinshi'' (Oto to koega isshoni naru Shisutemu; おっきんしゃい)
により、音の処理を行なった。システムの音生成・編集部では
収録された音(音声)の切り貼りの他、各種信号処理(フィルタリング、各種歪生成、
サンプリング周波数変換)、合成音の作成を行い、サウンドファイルの形で
予め蓄えておく。演奏部では表示されるボタンの押下により対応するサウンドファイル
が発音する。
これは、ミュージック コンクレートの思想に基づく
汎用の音楽システムを目指しているが、曲を多数手がけることにより、必要な機能を
追加していくというのが実状で、現在も育ちつつある。この曲で用いられている中心
的な信号処理技術は、ヒルベルト変換を利用した位相歪と音声のピッチシフトである。
使用機材の主なものは
NeXT Dimension (660M Hard Disk)とNeXT Turbo (2.8G Hard Disk)である。